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心にナイフをしのばせて

奥野修司の「心にナイフをしのばせて」(文春文庫)を読了しました。

心にナイフをしのばせて (文春文庫)

心にナイフをしのばせて (文春文庫)

 

神戸連続児童殺傷事件,いわゆる「酒鬼薔薇」事件の二十八年前に起こった事件の被害者家族のその後を追ったルポルタージュである。 その事件は高校一年生の少年が,同級生である少年を殺し,首を切断したというものである。もう一つの「酒鬼薔薇」事件として扱われているのはそのためだ。

本書では加害者少年ではなく,被害者少年の家族(父母および妹)にスポットを当てている。事件後の被害者家族の生活は,凄まじいものであった。父親,母親,そして妹のそれぞれが事件を引き摺りながら生きていたのである。

一方で,加害者少年は少年法に守られ,少年の犯罪は「前歴」となっても「前科」とはならず弁護士として成功している。

少年のとき犯した罪により刑に処せられてその執行を受け終り,又は執行の免除を受けた者は,人の資格に関する法令の適用については,将来に向かって刑の言渡を受けたかったものとみなす(少年法 第六十条)

殺人を犯した少年が司法に守られ,殺害された少年の家族は司法には全く無視され続け,地獄の中を生きていたのだ。

このような事件では加害者側の動向のみに注目されるけれど,被害者家族のその後なんてすぐに忘れがちである。最近では,被害者あるいはその家族の心のケアについても注目されているらしいですが,その必要性がよくわかる一冊でした。