Masassiah Blog

現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

大停電を回避せよ!電力マンたちの暑すぎる夏

『大停電(ブラックアウト)を回避せよ!電力マンたちの暑すぎる夏』(夏目幸明,メディアネット,2012年7月6日)を読了。

世界一短い停電時間を誇る日本の電力会社

もともと,彼らは優秀だった。あまり知られていないが,日本の電力会社は,停電時間が世界で一番,断トツで短い。周波数のサイクルもほぼ理想に近いなど,電力の質もいい。例えば半導体の工場は,一秒に満たない停電やわずかな電圧降下が起きただけで,その時に製造していたものの性能が落ちる。時には,すべて破棄しなくてはならない。「電力の質」がいいから日本製品の質もいいのだ。電力会社は,日本の技術力を,見えないところからバックアップしてもいたのだ。(p. 56)

海外電気事業統計によれば,日本の年間停電時間は 10 ~ 20 分程度とされている。

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福島第一原発の設計と安全基準

福島第一原子力発電所は,予備の発電機の場所も問題だった。それは,地下にあった。同発電所の一号機はアメリカ製で,一説によれば,アメリカではハリケーンの脅威に備えるべく,予備の発電機は地下に設置する,という。福島第一原子力発電所では,とくに改修せずに使った。これも,安全基準は満たしていた。(p. 75)

しかし,津波に対しては脆弱であった。

信念としての安全対策

「安全対策に関する”信念”って,貫いた人間がなくなったあとで,人を救うこともあるんでしょうね。逆にいえば,批判されてもなお貫かなければならない,それが”信念”なのでしょう」(p. 76)

安全対策とは,批判されようとも貫かれるべき信念である。

組織に必要なルールと個の判断

ルールなき組織は崩壊するが,”個の判断”がない組織は硬直化する。(p. 79)

(中略)

もう一度書きたい。ルールなき組織は崩壊する。だが,倫理,機転,感性など,個の輝きを大切にしない組織は硬直化する。(p. 81)

組織にはルールが必要である。しかし同時に,個人の倫理や機転,感性を尊重することも不可欠である。

村上春樹氏の言葉に見る個人の尊厳

この項の最後に,村上春樹氏の言葉を引用したい。

彼が,国家などの大きな組織を壁に,個人を卵にたとえて話した言葉だ。

「私が小説を書くとき,常に心にとどめているのは,高くて固い壁と,それにぶつかって壊れる卵のことだ。どちらが正しいか歴史を決めるにしても,私は常に,卵の側に立つ」

(中略)

「壁はあまりに高く,強大に見えて,私たちは希望を失いがちだ。

しかし,私たち一人一人は,制度にはない,生きた精神を持っている」(p. 84-85)

高い壁に立ち向かう卵のような個人の尊厳と精神が,社会に希望をもたらすのである。

日本経済の「ストックリッチ,フロープア」状態

今,日本は”ストックリッチ,フロープア”の状況にある。わかりやすくいえば,貯金額が多く,現金はあまり流通していない状況にある。景気は将来への恐怖感によって浮沈する。今は,将来への恐怖感が大きく,だからこそ,国民は貯金に励んでいるのだ。(p. 106)

楽観的な気持ちを持てれば,ストックを減らし,フローを増やすことが可能である。

電力供給責任と自然エネルギーの理不尽

「しかも,自然エネルギーを売る側に電力の供給責任はない。天気次第,風任せで電気ができた時だけ高値で売ればいいんです。一方,我々には供給責任がある。バックアップの火力発電所をつくるのは我々の仕事,ブラックアウトさせてしまったら我々のせい。こんな理不尽な話って,ないと思いませんか?」(p. 131)

このような理不尽を解消するために,さまざまな市場が生まれている。

舵を失った日本の原子力政策

「今,日本の原子力政策は,誰も舵を取っていない難破船です」(p. 161)

東日本大震災以降,日本の原子力政策は漂流を続けている。大きな時間的損失を生んでいるように思われる。

寺田寅彦の教え : 正しく恐れることの難しさ

「天災は忘れた頃にやってくる」という名言を残した明治時代の物理学者,寺田寅彦は,「物事を必要以上に恐れたり,まったく恐れを抱いたりしないことはたやすいが,物事を正しく恐れることは難しい」という言葉を残している。(p. 175)

正しく恐れるためには,まず物事をよく知ることが必要である。