『エネルギーをめぐる旅 文明の歴史と私たちの未来』(古館恒介,英治出版,2021年8月26日)を読了。
地球上で普段我々が目にする火とは,その多くが私たち生物の成れの果ての姿なのです。いや,より正確には,火は生命そのもの,生命の化身であるといったほうが正しいのかもしれません。(34 ページ)
火は生命そのもの,生命の化身という見方は,なるほどである。
蒸気機関では,石炭を燃やして水を加熱することで作った水蒸気が持つ熱エネルギーを使ってピストンを動かし,運動エネルギーを取り出しています。そこでは蒸気機関によって熱エネルギーから運動エネルギーへと,エネルギー形態の変換が行われていることになります。このエネルギー変換を実現した点こそが,それまでに人類が発明してきた水車や風車といった動力機械のいずれとも異なる蒸気機関の斬新さ,革新性なのです。(101 ページ)
熱エネルギーから運動エネルギーへと,エネルギー形態の変換が行われたことが産業革命の真骨頂。
20 世紀は石油の世紀ともいわれますが,それは石油を燃料とする内燃機関と,石油を原料として合成繊維や合成樹脂などを作る石油化学が,20 世紀に入って大きく発展したことによります。(116 ページ)
20 世紀は石油の世紀,では 21 世紀は何の世紀だろうか。データの世紀だろうか。
私たち人類が 70 億を超える人口を保ちながらも,なお牛肉を日常的に食するという贅沢が許されているのは,エネルギーを大量投入して工業的に生産した大量のトウモロコシを無理やり牛に食べさせているからにほかなりません。(180 ページ)
コストパフォーマンスの低い牛肉を,庶民の手に届く範囲にとどめているのはトウモロコシである。
カルノーサイクルは,ピストン運動による摩擦の発生や大気圧の影響を無視した理想的なサイクル運動であるため,実際の熱機関の効率がカルノーサイクルの効率を上回ることは決してありません。したがってカルノーが発見した定理は,熱機関の効率に関する限界を初めて科学的に示すことになったのです。(216 ページ)
熱機関の効率限界を示したものがカルノーサイクル。
人類が活用できる質の高いエネルギーは有限でかけがえのないものであり,大切に使わなければならない。これが熱力学の第二法則が教える最もシンプルなメッセージです。(222 ページ)
活用できる質の高いエネルギーは大事に使おう。
すべてがうまくいくと信じているわけではないので,私は楽観主義者ではない。
かと言って,すべてがうまくいかないと思うわけでもないので悲観主義者でもない。
ただ私は希望を持っている。希望のないところに進歩はない。
希望は人生そのものと同じくらい重要である。
――ヴァーツラフ・ハヴェル(チェコ共和国初代大統領)(306 ページ)
私も楽観主義者でも,悲観主義者でもない。ただ希望を持って生きている。
人為的な気候変動問題に対しては,アメリカのトランプ前大統領の言動に代表されるように,一部に今なお根強い懐疑論があります。改めて言うまでもなく気候環境を決めるメカニズムは極めて複雑で,二酸化炭素濃度を含む大気の組成以外にも,太陽の活動や地球軌道の変動,火山の噴火など,気候に影響を与える因子は数多くあります。そうしたなか,人為的な要因による二酸化炭素濃度の変化から将来の平均気温や海面水位の上昇幅を言い当てることはただでさえ難しいうえ,その結果がもたらす土地々々の気象への影響を正確に予測するにはさらなる困難を伴います。こうした側面が懐疑論者への栄養素となり,国際的な協調を必要とする活動に水を差す要因となっています。将来の地球気候環境を予測する気候モデルには誤差がつきものですから,粗を探すことは容易で批判は誰にでも簡単にできるわけです。(316 ページ)
気候環境を決めるメカニズムは複雑で,何とでも言えてしまう。経済活動と環境とのバランスの正解を求めることは難しい。
これまで経済成長を力強くけん引してきた先進諸国において,軒並み労働人口が減り始めたのです。いわゆる少子高齢化の進行です。少子高齢化が進むと,人口ボーナスは発動しなくなりますので,経済成長を推進する強力なブースターを失うことになります。
経済を成長させるためには,特殊技能を持つ集団を育成するなど,技術力を磨くことで生産性の向上を図っていく手段もありますが,頭数が揃うだけで自動的に発動する人口ボーナスと比べて実現の難易度が高いのが課題となります。結果として,少子高齢化が進む国が一定の経済成長を維持しようと望む場合には,大規模に移民の受け入れを検討することが最も手っ取り早い施策ということになってきます。(335 ページ)
少子高齢化を前提として,生産性を向上する方法を考え実践する。
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