『解像度を上げる 曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点の行動法』(馬田隆明,英治出版,2022年11月24日)を読了。
一定以上に深い情報はなかなかインターネットでは手に入らず,希少性が高まっています。そこでまず,現場に転がる希少で具体的な,つまり深い情報を先に得て,解像度を上げましょう。深い情報を持ち,共有することで,「この人は優れた洞察を持っている」と思われやすくなり,人を巻き込みやすくもなります。そうしてつながった人から様々な情報を得たり,議論したりすることで,広さと構造,時間の視点は後から充実してきます。まず深さを確保することで,解像度を上げるサイクルが回り始めるのです。(p. 34)
深さを確保しておけば,広さ,構造,時間は後からでも充実させることができる。
分からないところが分からない,つまり,疑問がない,質問ができないのは,解像度が低いときの典型的な症状です。(p. 40)
質問ができないということは,解像度が低い症状だと心得る。
起業のアイデアであれば,約 1000 時間,一つの領域に取り組んで初めて光明が見え始める,というのが筆者の経験則です。まず少なくとも 200 時間を情報と思考と行動に使わなければ,最初のそこそこ良いアイデアに辿り着くことはできません。最初のアイデアの良し悪しを検証するためには,200 時間から 400 時間ぐらいの活動が必要です。最初のアイデアは間違っていることがほとんどのため,あらためてアイデアを考え直すことにさらに 200 時間,そしてさらに検証するのに 200 時間から 400 時間かけると,それだけで合計 1000 時間ぐらいとなります。(p. 69)
アイデアを出すのに 200 時間,アイデアを検証するのに 200 ~ 400 時間,検証の結果を踏まえたアイデアの再構築に 200 時間,アイデアの再検証に 200 ~ 400 時間。あっという間に 1000 時間を超えてしまう。
情熱がなければ,起業しようと思わないほうがよい。
課題とは,顧客や市場の持つ問題のことです。英語では problem という単語に相当します。不満や不便,不都合など,課題は「不」や「負」と呼ばれることもあります。特に重要な課題のことを,イシュー,論点と呼ぶこともあり,いかに適切なイシューを設定するかが大事だという話はビジネスにおいてしばしば強調されます。研究でも,最も重要な作業の一つは,良いリサーチクエスチョンを出せるかどうかだと言われます。
このように課題や問いが重要視される理由は,良い課題を選べるかどうかで生み出される価値がほぼ決まると言っても過言ではないからです。(p. 85)
イシューを見極めることができなければ,いくら努力しても価値は生まれない。
良い課題の 3 条件(p. 89)
- 大きな課題である
- 合理的なコストで,現在解決しうる課題である
- 実績をつくれる小さいな課題に分けられる
今,目の前にある課題は,良い課題の条件にマッチしているか。
「深さ」の視点で解像度を上げる行為は,学習に似ています。学習のプロセスを考えるときに用いられるのが,内化と外化という考え方です。(p. 103)
- 内化 (internalization) : 読む・聞くなどを通して知識を習得したり,活動(外化)後のふり返りやまとめを通して気づきや理解を得たりすること。
- 外化 (externalization) : 書く・話す・発表するなどの活動を通して,知識の理解や頭の中で思考したことなど(認知プロセス)を表現すること。
内化と外化を繰り返すことで,「深さ」の視点で解像度を上げていく。
深めるというと,詳しく物事を知る,そのために情報を集める「内化」がイメージされがちですが,「外化」,つまり書く・話す・発表するなど,試行錯誤して自分の中にあるものを表現するプロセスも同時に必要です。情報・思考・行動の考え方で言えば,情報を仕入れるだけではなく,思考し,きちんと行動することが大事だということです。(p. 104)
書く・話す・発表することで,詳しく物事を知ることができる。
良いアイデアを持つ起業家と,そうしたアイデアに至らない起業家との差は「情報量」で多くの説明ができるのではと思うぐらい,私の知る優れた起業家は大量の情報を集めています。(p. 114)
情報量を持たないのは,情報を集めようとしていないからだ。
何かを思いついたらすぐにメモを取れるようにしておくことは,地味ではありますが,解像度を上げるための効果的で行いやすい具体的な方法です。課題に気づいたり,アイデアを思いついたりした瞬間に書き留める癖をつけるだけで,解像度は飛躍的に伸びていきます。(p. 157)
アナログな手段ではあるが,ノートはいつも持ち歩いている。
自分の時間の 2 割程度は常に探索のために使い,いつもと違う人と話したり,違うことを体験してみる(p. 199)
意識して,自分の時間の 2 割を新しいことに使ってみる。
陰謀論に限らず,私たちはシステムの複雑さから目を背けて,因果関係や法則を単純化して見たがる傾向にあります。単純化して解釈したり,伝えたりしたほうが良いときもありますが,解像度を上げるうえでは,過度な単純化は避け,複雑なものは複雑なものとして捉えて,システムを構成する要素とその間のつながりをきちんと見ていきましょう。(p. 232)
解像度を上げるためには,単純化を選ぶのではなく,とことん理解しようと心がける。
何も考えずに作っても構造は必然的に生まれてしまうものだからこそ,効果的な構造を作り上げるためには意識的な努力が必要(p. 293)
考えて構造を生み出そう。
何かの領域である程度深く物事を知っておくことが,効果的な新しいつながりを見つけるための基盤になります。(p. 301)
送配電事業とシステムの両方を深く知っているからこそ,新しいつながりを見出すことができる。