『物価とは何か』(渡辺努,講談社,2022年2月1日)を読了。
この仕組みは,人々が予想したことが実際に実現されるので「自己実現的予想」とよばれています。これによって起こるのが「自己実現的インフレ」です。「最初に予想ありき」というところがポイントで,その意味において,予想が物価を決めているということになります。事後の結果が当初の予想どおりとなれば,人々は当初の予想が正しかったと自信を深め,引き続きその予想を前提に行動します。このサイクルが繰り返される中で,その予想が社会に広く共有されていくことになるのです。(p. 99)
今,人々は何を予想しているのか考えれば,未来がわかる。
インフレを実現するには,二つの条件が必要ということがわかりました。第一の条件は,人々がそれを予想し,その予想が社会のコンセンサスになることです。第二の条件は,中央銀行がだぶついた貨幣を吸収するオペレーションを行うことです。二つのいずれが欠けてもインフレは起こりません。皮肉めいた言い方をすれば,インフレは,インフレを予想する人々と,その予想の実現に協力を惜しまない中央銀行との緊密な共同作業の産物と言えます。(p. 108)
2024年7月現在,インフレに向かっているのは,二つの条件がそろっているからか。
迅速さを優先してとりあえず何かを思いつかなければならないとき,私たちはたどりやすい(思い出しやすい)記憶や知識,つまり「利用しやすい」記憶や知識に頼ろうとします。これが利用可能性ヒューリスティックスです。(p. 230)
「利用しやすい」記憶や知識に頼ろうとするのは,人間の性。
目線を変えるため「利用しにくい」記憶や知識に頼ってみよう。
現在多くの研究者とポリシーメーカーが目指しているのは,子供の童謡*1の世界です。これに対して,老人の歌*2は中央銀行が無視される社会です。ちなみにこの故事では,老人の歌の世界のほうが徳が高いということになっています。皆さんはどちらの社会が暮らしやすいと考えるでしょうか?(p. 370)
情報化社会では,老人の歌の世界は難しいから,子供の童謡の世界を目指すのだろう。
- 価格: 2145 円
- 楽天で詳細を見る
- 価格: 2090 円
- 楽天で詳細を見る