『超入門カーボンニュートラル』(夫馬賢治,講談社,2021年6月1日)を読了。
UNEP は,経済成長と生活の質向上と環境制約の 3 つを両立させるためには,開発途上国には「リープフロッグ(蛙飛び)」と呼ばれる大幅な発展の飛躍が必要だとしたうえで,
リープフロッグには,持続可能性志向のイノベーションを起こす十分な能力と,より持続的な開発を実行可能なオプションにする経済合理的な「リープフロッグ」テクノロジーを実証するイニシアティブを提唱し,イノベーションを活用するための一連の適切な制度整備が必要となる。
と提唱している。(位置 No. 776)
日本は,リープフロッグする開発途上国に追い抜かれていくこともありうるか。
「62 人の大富豪が世界経済を支配している」と主張したとすると,それは論理の飛躍というものだ。2020 年時点で,世界で運用されている資金の金額は,全体で 280 兆ドル(約 3 京円)もあるのをご存じだろうか。それと比べたら富豪 62 人の資産合計 190 兆円は,たかだかその 0.6 % にすぎない。(位置 No. 864)
世界で運用されている資金のうち,私の資産は・・・。
『2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』では,14 もの業種について,2050 年までのイノベーションと産業転換の大きな方向性を示したものとなっている。対象の業種は非常に多岐にわたり,世の中にある企業は基本的にすべて影響をうけることになる。(位置 No. 1095)
対象となった 14 業種
- 洋上風力産業
- 燃料アンモニア産業
- 水素産業
- 原子力産業
- 自動車・蓄電池産業
- 半導体・情報通信産業
- 船舶産業
- 物流・人流・土木インフラ産業
- 食料・農林水産業
- 航空機産業
- カーボンリサイクル産業
- 住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業
- 資源循環関連産業
- ライフスタイル関連産業
2050 年までのカーボンニュートラルは,節電程度では到底実現できはしない。必ず大胆な産業転換が必要となる。この産業転換を見事に成し遂げられた企業は今後も輝いていくことができる。反対に,産業転換に失敗したり,変化をおそれて躊躇したりした企業は,徐々に経営が傾いていく。
対象となった 14 業種は,多岐にわたる印象。
このような行動変革を促すための方策では「ナッジ理論」という言葉が注目を集めている。ナッジは「ひじでつつく」という意味の英語だが,行動科学の用語で,ちょっとした工夫で自発的な行動変容を促す仕掛けのことを指す。(位置 No. 1545)
どのようにひじでつつくかが難しいのか。
陰謀論は,カーボンニュートラルの動きを「誰かの陰謀」とみる見方だ。なかには,気候変動そのものを否定する勢力までもがいる。陰謀論では,カーボンニュートラルの動きは,欧米や中国が仕掛けた「まやかしの誘い文句」であり,決して海外の流れに追随してはならないと主張したりもしている。最近では「国連は中国に乗っ取られている」説の論者も増えてきたことで,国連が気候変動危機を主張するのであれば,それは信じてはいけないという声まである。(位置 No. 1837)
2050年カーボンニュートラルを達成しなければならないほど,気候変動の問題はひっ迫しているのか。