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小室直樹 日本人のための経済原論

小室直樹 日本人のための経済原論』(小室直樹東洋経済新報社,2015年11月1日)を読了。

「従来正しかったことは今でも正しい」,「今までの遣り方を踏襲すれば今度もまた成功する」。このような考え方を,伝統主義(Traditionalismus, traditionalism)と言う。マクス・ヴェーバーは,「永遠の昨日」(Das ewig Gestige)と呼んだ。それは,「昨日,斯くて在りき,明日もまた斯くて在りなん」という考え方であるからである。つまり,伝統主義とは,「それが過去に行われてきたというだけの理由でそれを正しい」とする思想である。(位置 No. 775)

過去に行われたことは,過去において正しかっただろうが,今は正しいとは限らない。

市場淘汰こそ資本主義の生命である。

市場で淘汰された労働者は失業者となる。市場で淘汰された企業は破産する。

故に,

失業(者)と破産こそ資本主義の生命である。

という命題(文章)が成立するのである。(位置 No. 916)

補助金をバラまいていては,市場淘汰は起こらないのではないか。

業界団体を通じて政府の官僚はあらゆる部門に命令できる(ウォルフレン著『人間を幸福にしない日本というシステム』51 ページ)

政府の官僚は命令で,世の中がうまくいけばよいのだが,そうはなっていない。

大蔵官僚を中心とする官僚は,日本経済の支配権を手に入れた。中国社会は,「陽儒陰法」(表向きは儒教で治めていることになっているが,本当は法家の思想で治めている)であると言われている。

この表現を用いるならば,現代日本の経済は「陽資本主義,陰社会主義」経済か。

「タテマエは資本主義,ホンネは社会主義」と言うべきか。(位置 No. 4364)

タテマエとホンネを使い分ける。

役人の増殖過程は不可逆であって,不必要になっても役人の数は減ることはない。一旦増えた役人は仕事にしがみ付いて離れない。

だから,一度規制を作ると,そこに張り付いた役人の存在によって規制廃止は困難となるのである。

否,それだけではない。増殖過程に入った役人どもは,存在理由のために仕事を探す。資本主義の役人たる者,無為にして化したがらないのである。(位置 No. 4465)

役人の仕事にデジタル技術を取り入れて,役人の数を減らしていけないか。

今,要路の人々は,ケインズ政策は利かなくなったと嘆く。

が,ケインズ政策が有効であるための一つの大切な条件は,「役人が十分に有能で誠実である」ことである。役人が民間人より無能で誠実性を欠けば,ルーカスも示すように,政府の政策に何の効果も期待できないのである。(位置 No. 4818)

ケインズ政策が利かないのは,役人の有能さと誠実さが足りないからなのか。

野口悠紀雄も「歴史に現れるバブルの物語は,後から振り返ってみれば,どれも馬鹿げたものばかりである。それにもかかわらず,なぜ,同じようなことが何度も繰り返して起こるのだろうか。……人間は,歴史から何の教訓も得られないほど愚かなのだろうか」と設問している。(位置 No. 5647)

人間は,歴史から教訓を得られないほど愚かではないと思うが,その教訓を活かせるほど賢いとも思えない。

デフレ・スパイラル中でも特に致命的な「投資機会スパイラル」を止めることができなくなった理由は何か。

一つの理由は,クルーグマン教授が,事毎に主張しているように,日本が「流動性の罠」に落ちてしまったからである。

流動性の罠」とは,ケインズによって唱えられた説で,利子率があまりに低くなると,人々は消費や投資への意欲を失って,全てを貨幣で持つことを欲するようになることを言う。(位置 No. 9823)

流動性の罠から抜け出すには,利子率を高くするしかないのでは,と素人ながらに考えてみる。