2022年10月末で定年を迎えた方が身近にいて,いつか私にも訪れるその日のために『終わった人』(内館牧子,講談社,2018年4月1日)を読んでみた。
サラリーマンは,人生のカードを他人に握られる。配属先も他人が決め,出世するのもしないのも,他人が決める。(35 ページ)
私の今の立場も,他人が決めたものだと思うと,少し寂しい。
「人は死ぬまで,誇りを持って生きられる道をみつけるべきだと……あの時,骨身にしみた」(71 ページ)
今の会社を去った後も,誇りを持って生きられるだろうか。
俺はエリートコースを歩き,ほとんどを本部で過ごしたため,言うなれば「手に職」はつかなかった。
早々と出世コースを外れた者が,結局は先を見据えて学び,資格を取り,人生を切り拓いたりする。(101 ページ)
いくつか資格は取得したが「手に職」というほどのものではないか。
「辞める時は即」が鉄則だ。相手が困る時期に辞めるものだ。
散り際千金だ。(126 ページ)
「辞める」といったとき,引き留めてもらえるうちに辞める。
「年齢や能力の衰えを泰然と受けいれることこそ,人間の品格よ」(193 ページ)
衰えは自覚しているが,衰えをなるべく先延ばしにしなければ,この先が楽しめない。
「完全な肉体な所有者でも,死んで埋められてしまえば一切平等,唯ホンノ一寸の間,悠久な宇宙に対比しての不自由や苦痛に過ぎぬ」(199 ページ)
懸命に生きても,死んでしまえばただの肉の塊か。
思い出は時がたてばたつほど美化され,力を持つものだ。俺は勝てない相手と不毛な一人相撲を取っていたのではないか。(318 ページ)
美化された思い出と戦っていないか,振り返ってみよう。
「胡馬北風に依る(北方で生まれた馬は,北風が吹くたびに故郷を懐かしむ)」(362 ページ)
私の故郷は雪国であり,故郷から離れていたときは,雪を見るたびに故郷を懐かしんでいた。
「重要なのは品格のある衰退だと私は思います」(369 ページ)
国も人も品格のある衰退を選ぶ。いつまでも昔のままではない。
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