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現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

時間は存在しない

『時間は存在しない』(カルロ・ロヴェッリ 著,冨永 星 訳,NHK 出版,2019年8月31日)を読了。

ボルツマンは,わたしたちが世界を曖昧な形で記述するからこそエントロピーが存在するということ示した。エントロピーが,じつは互いに異なっているのに,わたしたちのぼやけた視界ではその違いがわからないような配置の数[状態数]を表す量であることを証明したのだ。つまり,熱という概念やエントロピーという概念や過去のエントロピーの低いという見方は,自然を近似的,統計的に記述したときにはじめて生じるものなのだ。(37 - 38 ページ)

エントロピーの概念は,分かったようで,分からない。

わたしたちの「現在」は,宇宙全体には広がらない。「現在」は,自分たちを囲む泡のようなものなのだ。

(中略)

宇宙全体にわたってきちんと定義された「今」という概念が存在するというのは幻想で,自分たちの経験を独断で押し広げた推定でしかない。(47 - 48 ページ)

私の「現在」は,私の中にしか存在しない。

過去と未来の違いはすべて,かつてこの世界のエントロピーが低かったという事実に起因しているらしい。(153 ページ)

過去と未来の違いをエントロピーで語る。

世界を動かしているのはエネルギー資源ではなく,低いエントロピーの資源なのだ。低いエントロピーがなければ,エネルギーは薄まって一様な熱となり,この世界は熱平衡状態になって眠りにつく。もはや過去と未来の区別はなく,何も起こらなくなる。(166 ページ)

エネルギー資源をエントロピーで捉えてみると,違った世界が見えるかもしれない。

すなわち,エントロピーが増大する過程は必ず "エネルギーの損失" を伴い,エントロピーの増加はエネルギーの質を劣化させる。

高品質のエネルギー源から仕事を得ることなくエネルギーを劣化させることは,エネルギーの利用の観点からは非常にもったいない。

この世界で出来事が生じるのは,そして宇宙の歴史が記されていくのは,あらゆるものが抗いがたくかき混ぜられ,いくつかの秩序ある配置が無数の無秩序な配置へと向かうからだ。宇宙全体がごくゆっくり崩れていく山のようなもので,その構造は徐々に崩壊しているのだ。(171 ページ)

エントロピー増大の原理*1の概念だろうか。

参考文献

  • 伊東 敏雄「な~るほど!の熱学」

更新履歴

  • 2022年2月2日 新規作成

*1:閉じた系においては,エントロピーは発生するのみで消滅することはない