私にとって,知的生産性を高めるきっかけとなった『イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」』(安宅 和人,英治出版,2010年12月11日)において,特に響いたところを紹介。
仕事とは何かを生み出すためにあるもので,変化を生まないとわかっている活動に時間を使うのはムダ以外の何ものでもない。これを明確に意識しておかないと「悩む」ことを「考える」ことだと勘違いして,あっという間に貴重な時間を失ってしまう。(p. 5)
「悩む」だけでは,何も生み出さない。考えて,何かを生み出す。
issue の定義(p. 25)
- a matter that is in dispute between two or more parties
2 つ以上の集団の間で決着のついていない問題- a vital or unsettled matter
根本に関わる,もしくは白黒がはっきりしていない問題
issue の定義によると,issue はそれほど多くないと感じられる。
世の中にある「問題かもしれない」と言われていることのほとんどは,実はビジネス・研究上で本当に取り組む必要のある問題ではない。世の中で「問題かもしれない」と言われていることの総数を 100 とすれば,今,この局面で本当に白黒をはっきりさせるべき問題はせいぜい 2 つか 3 つくらいだ。(pp. 27 - 28)
今の局面において,取り組まなければいけない問題を見極める。
ビジネスパーソンというのは,会社に雇われてはいるが,マネジメントや自分の仕事に関わる「ハンドルを握る側の人」というのが本来の意味だ。勤怠管理はあっても,本質的には労働時間ではなく,マネジメント活動と日々のビジネス活動を通じたアウトプットにコミットし,そこで評価される。(pp. 36 - 37)
ビジネスパーソンとして,アウトプットにコミットする。
ビジュアル思考型は言語思考型が言っていることをおおよそ理解できるが,逆に言語思考型はビジュアル思考型の言うことをほとんど理解できない。世の中には言語思考型のほうが多いので,ビジュアル思考型が自分の取り組もうとしているイシューを言語化していないと,チームの生産性は大きく下がる。(p. 52)
私はビジュアル思考型の人間であると思うので,言語化にはこだわっていく。
どれほどカギとなる問いであっても,「答えを出せないもの」はよいイシューとは言えないのだ。「答えを出せる範囲でもっともインパクトのある問い」こそが意味のあるイシューとなる。そのままでは答えの出しようがなくても,分解することで答えを出せる部分が出てくればそこをイシューとして切り出す。(p. 72)
「答えを出せる範囲でもっともインパクトのある問い」を見極めて,イシューとする。
イシューが見つからないときのアプローチ(p. 88)
- 変数を削る
- 視覚化する
- 最終形からたどる
- 「So what ?」を繰り返す
- 極端な事例を考える
イシューが見つからないときは,アプローチを変えてみる。
「分析とは何か?」
僕の答えは「分析とは比較,すなわち比べること」というものだ。分析と言われるものに共通するのは,フェアに対象同士を比べ,その違いを見ることだ。(p. 150)
分析とは,同じ土俵で比較すること。
総じて,できる限り前倒しで問題について考えておくことだ。このように「できる限り先んじて考えること,知的生産における段取りを考えること」を英語で「Think ahead of the problem」と言うが,これは所定時間で結果を出すことを求められるプロフェッショナルとして重要な心構えだ。(p. 187)
問題さえはっきりすれば,あとは解くだけ。
「いわゆる天才とは次のような一連の資質を持った人間だとわしは思うね。
要は固執しないことだ。多くの人が失敗するのは,それに執着しているというだけの理由で,なんとかしてそれを成功させようとまず決め込んでかかるからじゃないだろうか。ファインマンと話していると,どんな問題が持ち上がっても,必ず<いやそれにはこんな別の見方もあるよ>と言ったものだった。あれほど一つのものに固執しない人間をわしは知らないよ」(『ファインマンさんは超天才』C・サイクス 著)(pp. 195 - 196)
- 仲間の圧力に左右されない。
- 問題の本質が何であるかをいつも見失わず,希望的観測に頼ることが少ない。
- ものごとを表すのに多くのやり方を持つ。一つの方法がうまく行かなければ,さっと他の方法に切り替える。
超天才のファインマンさんに会ってみたかった。
「コンプリート・スタッフ・ワーク(Complete Staff Work)」
これは「自分がスタッフとして受けた仕事を完遂せよ。いかなるときにも」という意味だ。この「コンプリートワーク」という言葉はプロフェッショナルとして仕事をする際には,常に激しく自分にのしかかってくる。(p. 233)
自分に与えられた仕事は,とにかく完遂させる。
特に周りが「死ぬまで働け!」といった「犬の道」信者ばかりで,信頼できる相談相手がいない人は,疲弊して倒れてしまう前にこの本をヒントにして「考えて」ほしい。「悩む」のではなく,「考える」ときに使ってもらい,大きくても小さくても,ひとつのまとまったプロジェクトを乗り切ったときにもう一度立ち返って目を通していただければまた違った発見があると思う。(p. 240)
「犬の道」信者が蔓延る日本で,イシューからはじめることができれば,ものすごいアドバンテージがある。
こんなに,おいしいことはないが,日本はよくならない。
目次
- 序章 この本の考え方――脱「犬の道」
- 第1章 イシュードリブン――「解く」前に「見極める」
- 第2章 仮説ドリブン①――イシューを分解し,ストーリーラインを組み立てる
- 第3章 仮説ドリブン②――ストーリーを絵コンテにする
- 第4章 アウトプットドリブン――実際の分析を進める
- 第5章 メッセージドリブン――「伝えるもの」をまとめる
更新履歴
- 2020年10月31日 新規作成
- 2022年1月6日 加除修正
- 2024年2月8日 タイトルを見直し(AI を活用)