2020年8月13日作成,2021年9月4日更新
『カスタマーサクセスとは何か』(弘子ラザヴィ,英治出版)を読了。
カスタマーサクセスはクラウド事業かどうかにかかわらず,デジタル時代を生き抜くあらゆる企業にとって必須だ。(位置 No. 208)
カスタマーサクセスは,事業を考える上では避けては通れない。
競合優位,プロダクト優位,テクノロジー優位など,他にもいろいろ,自社事業の強みの拠り所を考える選択肢は数多くある。けれど僕の中では「狂ってると言われるレベルで,カスタマーにとって無くてはならない存在になることを考える」ことこそが,創業初日から 1 ミリも揺るがない自信をもって事業展開できる唯一の選択肢なのだ。(位置 No. 233)
amazon の原点は,「狂ってると言われるレベルで,カスタマーにとって無くてはならない存在になること」である。
カスタマーがいなければ,商売は成り立たない。
リテンションモデル(位置 No. 262)
- 利用者が,日常的・継続的にそのプロダクトを利用し,モノの所有に対してではなく成果に対して対価を払う→ライフタイムバリューの最大化
- 利用者が,いつでも利用を止める選択権を持ち,かつ初期費用が非常に少なくてすむ→買ってもらってからが勝負
- 利用者が,それ無しでは生活や仕事ができない・使い続けたいと断言できるほど明らかにプロダクトが常に最新状態に更新・最適化され続ける→手放せない・外せないプロダクト
- 利用者が,自分にとって嬉しい成果を得られるならば,自分の個人データをプロバイダーが取得することを許す→データからカスタマーの未来を創る
リテンションモデルを続けていくためには,常に最新状態に更新・最適化され続けなければならない。
供給側のトレンド1「限界費用ゼロ社会へのシフト」は利用者側のトレンド2「所有<利用,成果重視の価値観」を後押しする。そしてその延長線上に誕生しつつある新しい価値形態3「シェアリング経済,コミュニティ価値」,即ち共有しあう関係性やコミュニケーションそのものに課金する価値の形態の登場を促す。(位置 No. 407)
共有しあう関係性やコミニュケーションに着目したいのは,目の付け所がよい。
バリューチェーンやプロダクト自体にソフトウェアが浸透したことで,以前は入手不能だった「プロダクトの買われ方・使われ方」に関する情報を客観詳細データとして入手できるようになった。競合に差をつけたい企業はカスタマーから日常的に直接データを取得し,分析に基づき個別化した働きかけを継続的にすることで絆を強める。そのためのデータ争奪戦が競合感で熾烈になるトレンドだ。(位置 No. 526)
データを取得することで,パッチではない打ち手が考えられる。
要は「未来を変えてくれる期待感(ワクワク感)」の高い所により多くのお金が集まる時代になったのだ。高い期待を寄せられた会社は,高い時価を利用して先端の技術を買収したり優秀な人材を採用したりするなど「未来の価値」を競合に先駆けて手に入れ,さらに期待値を上げていく。(位置 No. 598)
「未来を変えてくれる期待感(ワクワク感)」をどれだけアピールできるか。
新しい競争舞台での商社はなぜそれほど強いのか?――その強さの秘訣は「プロダクトを買ってくれたカスタマーが,それをどう使い・どんな成果を得ているのかを深く理解し,カスタマーへ成功を届けることで,カスタマーがそれ無しでは生活/仕事にならない(ファンになる)状態にしている」こと。つまり,先の大波を逆に追い風にできているのだ。(位置 No. 697)
ファンになる候補を探しておこう。
こうしてテスラは従来の車メーカーが取っていない車の利用データを日々取得し続けている。そして,より素晴らしいコト・成果を届けるためにソフトウェアをいつでも車単位で制御できるのだ。(位置 No. 802)
車の利用データを取得し続けることで,他の車メーカでは見出だせない価値を見つけてしまうかも知れない。
「私たちが新しいソフトウェアやサービスを市場にだす時,本当の山場は技術に関わる所ではありません。私たちが新しいサービスで実現したいのは人の働き方を変えることです」by ロブ・ダリウォル(位置 No. 1044)
技術ではなく,人の働き方を変えるか,にとことんこだわる。
「私たちがテクノロジーを使って本当に実現したいのはカスタマーの働き方を変えることです。私たちが目指す姿の価値を 100 とした時,プロダクトの BizRobo! というテクノロジーの価値は 10 % にすぎません。残り 90 % は,私たちがプロデューサーとなって目指す姿を実現する方法を考えたり,私たちにない英知をもつ企業を集めてエコシステムを構築しフォローしたりすることの価値です。便利なら他社のツールを使っていいと思います」by RPA テクノロジーズ社 大角暢之社長(位置 No. 1233)
技術を売りにしても,すぐに模倣されてしまう。
逆に,優れた技術であれば,模倣してしまえばいい。
変革を論じる時の共通言語・フレームワークは必須。
「選択肢がいろいろあるなら,便利さを頭で理解して満足するのではなく,心で満足するサービスを使いたいですよね?心で満足した体験は必ず周囲の人に伝播します。心に残るプロダクト体験を設計し,心で満足してもらえるサービスにすることが僕の考えるメルカリのゴールです」by メルカリジャパン CEO 田面木 宏尚(位置 No. 2305)
技術で訴えるのではなく,心に訴えかける。
「凄くカスタマーサクセスな人だなあ」と筆者が思う人は例外なくデータの鬼だ。利用可能なデータが多いという環境与件は大きい。しかし大切なのは,目の前のカスタマー一人の今の問題を解くという短期の視点より,将来に同じ問題を抱えかねないより多くのカスタマーに思いをはせた長期の視点を瞬間的に優先する点だ。より多くのカスタマーへ成功を届けるには,論理とデータに基づき再現性と予測性を優先して意思決定をする,そこに強いこだわりをもって譲らない人が向いている。(位置 No. 2561)
カスタマーサクセスな人は,データにとことんこだわる。
論理とデータに基づき,意思決定できるようになる。
「ここ最近特に強く感じるのは,カスタマーサクセスのリーダーがもの凄く早いスピードでキャリアアップする傾向です。経営センスがあって,経営力も定量分析スキルも兼ね備え,それらを局面に応じて使いこなすのは非常に難しいことです。さらに経営メンバーとしてカスタマーサクセスの責任職を経験すれば,人間性やマインドも大いに鍛えられます。カスタマーサクセスは間違いなく CEO へ続くキャリアです」 by バイロン・ディーター(位置 No. 2648)
カスタマーサクセスのリーダーは,憧れのポジション。
経営センス,定量分析スキルを兼ね備えなければ,就くことはできないが。
「私が 20 年以上のキャリアで学んだのは『be relevant(有用で欠かせない存在になる)』です。あなたのカスタマーは,頼りになるあなたという存在を本当に必要としています。そういうカスタマーへの愛と情熱,そして頼りにされる存在という自分の仕事への情熱,それがキャリアで成功するのに必要なすべてだと思います」by マルケト CEO スティーブ・ルーカス(位置 No. 2709)
カスタマーに頼りにされる存在という自分の仕事への情熱を忘れない。