Masassiah Blog

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リスクをヘッジできない本当の理由 土方 薫

2020年5月23日更新

『リスクをヘッジできない本当の理由』(土方 薫,日経プレミアシリーズ,2009年3月9日発行)を読了。

 これまで金融というと,なんとなく特殊な世界にいて「きっと金融職人たちがうまくやっているのだろう」といった,漠然とした信頼感しかなかった。しかし,個人でもリスクヘッジをしながら上手く危機を回避しているのに,彼らにそれができないとなると,どこかおかしいと感じるのがごく普通の感性だろう。(pp. 32 - 33)

金融職人たちは,リスクをヘッジしているようでしていない。
そもそも,金融市場自体がギャンブルなので,リスクをヘッジしきれない。

 しかし,どんな精緻な分析をしようが,あるいは高度なモデルを使おうが,不安定で熱しやすく冷めやすい市場の将来を予想することはできるはずがないのだ。(p. 49)

「市場の将来を予想することができるはずがない」ということを肝に銘じておこう。しかし,完全に予想できなくても,ちょっと将来を予想するだけで,うまく儲ける方法があるのではないか。

 まさに人は,「浮かれ」「熱狂し」,そして「事実に気づき失望する」。IT バブルの膨張と崩壊は,まさにその経過を見事に示している。いったいこんな市場のどこが効率的なのだろうか。まさにロバート・シラーの主張する『根拠なき熱狂』そのものである。(p. 80)

人の心理に影響される市場は非効率的だ。

完全に効率的な市場では,価格が全て適正水準にあるため,取引機会は永遠に生まれてこない。しかし現実の市場は発展途上であるので,価格はしばしば適正水準から外れ,収益チャンスを提供する。(p. 83)

完全に効率的な市場であれば,価格は全て適正水準に向かって変動する。
そして,時間が経てば適正水準に収まるはず。


価格モデルの限界(pp. 115 − 117)

  1. 価格モデルによるシミュレーションによってできあがった価格分布が正規分布に従うと仮定していること
  2. 過去のデータに基づき将来の価格のブレの大きさ(ここではボラティリティをこう表現することにする。金融に詳しい方は少々我慢してほしい)を予想して,リスクを計測していること

市場をモデル化しようとすること自体が,無謀なチャレンジなのか。

 では,実際の市場において,価格は正規分布になるようなランダム・ウォークをしているのか。答えは「否」なのである。しかも問題なのは,価格のブレにクセがあることだ。どういったクセかというと,正規分布を超えて価格が下落してしまう傾向があるのだ。(p. 124)

価格のブレのクセは人の真理によって影響される。

 ではなぜ,途中でマネーゲームから降りられないのか。それは,私たちが投資しているマネーゲームの結果が,偶然のもとで決まっていることを忘れてしまっているからだ。(p. 150)

金融工学などを語ってみても,市場は偶然のもとで決まっているマネーゲームなのだ。

 このように,リスクのある環境下において人が下す評価価値というものは,ある一定限度を超えた瞬間にガラッと変わってしまう。こうした人の行動パターンを証明したのが,行動経済学の権威である D・カーネマンと A・トヴァースキーである。彼らは,「人はある基準になる点を境にして利益局面で得られる価値よりも損失局面で失う価値を 2.0 ~ 2.5 倍ほど重要視する」ということを,実験で明らかにした。つまり,儲かっている状態ではさほど気にかけなかった利益でも,それと同じ金額だけ損をすると,より深刻に感じる。その差が 2 倍から 2.5 倍であるというのだ。(pp. 154 - 155)

「売りは早かれ,買いは遅かれ」という格言が,それを端的に表している。

 オマハの賢人と呼ばれるウォーレン・バフェットも同じことをいっている。彼は経験と危険性を区別して,「経験は過去の出来事に関する情報であり,その出来事が再び起こる確率を考えるうえで基礎となる。一方の危険性は,これまで起きなかった出来事が起きるかもしれない確率を表す。保険がこれまで危険性ではなく経験に基づいて保険料を算出してきたために,巨大なテロリスクを安易に引き受けてしまった」と述べている。(pp. 169 - 170)

リスクをヘッジできないのならば,ある一定の覚悟をもって,リスクを受け入れるしかない。