2020年5月9日更新
『決断する力』(猪瀬 直樹,PHPビジネス新書,2012年4月2日発行)を読了。
決断は,外見では非連続な思考のように見えるが,そうではない。粘り強さの果てに,ようやく飛躍することのできる蓄えられた力の結果である。アスリートの肉体が日頃の鍛錬のたまものであるように。(p. 3)
決断力を高めていくためには,日々の精進しかない。
中央からの指示がしっかりしていないと,とたんに現場は混乱する。指揮命令系統が一元化されていないと,誰の指示に従えばいいのかわからないし,指示がコロコロ変わるようでは,何がいちばん大事なのか見えなくなる。(pp. 29 - 30)
指示がブレないように,心がけるのが基本。
危険の瞬間は,完璧さを求めてはいけない。限られた情報をもとにまずは走り出す。状況に変化があれば,後から修正を加えていく。(p. 57)
有事のときには,完璧でなくても進まなければならないときがある。
100 % の情報でなく,80 % 程度の情報であっても,そこで決断する勇気を持つ。
リーダーは状況の変化に合わせて臨機応変に対応しながらも,一度こうと決めたことに対しては,断固やり抜かなければならない。決断そのものが間違っていた場合は,すぐに過ちを認めて舵を切り直す必要があるが,間違っていない場合は,どんな横やりが入ろうとも,ブレることなく,強い意志でやり抜くことだ。(p. 81)
リーダーになったときのことを考えて,決断は慎重に,そして強い意志を持つ。
有事には,秀才は機能しない。危機管理という意味では,ブレない「変人」のほうが緊急時のリーダーに向いている。要するに,組織の中にどれくらい「変人」がいるか。「変人」の混ざり具合が重要だ。(p. 87)
私の業界は,様々な課題を抱いている。
それを乗り切るためには,ちょっと「変人」になった方がいいのかもしれない。
インフラ事業は「巨額の先行投資,長期安定回収」が基本。税金でつくったインフラは債務がなくなった時点で利用者に利益を還元していく必要がある。(p. 169)
電力設備の債務がなくなることはあるのか。
東電という巨大な独占事業体の資金調達力が失われているいまこそ,独自の電力会社を育てるときである。東電の代わりに資金を調達し,発電する。“第二東電”をつくる,と言い換えてもよい。(p. 182)
資金調達さえできれば,“第二東電”ができると考えるのは稚拙ではないか。発電事業を営むためには,しっかりとした人材が大量に必要ということを認識すべし。
たしかに日本人は,いきなり傭兵が是か非かと問われてもピンとこないだろう。戦後,米国の庇護の下,戦争自体を「想定外」にして,経済活動に邁進してきた日本人にとって,その設定自体が成り立たないと,一瞬感じてしまうのは無理からぬところがある。(p. 209)
想定外の津波,という東電を批判するけれど,戦争を想定外にする人はどうかと思う。
一方ではあらゆる自体を想定せよ,というのに,戦争は起こらないと思えることが理解できない。