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現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

先送りできない日本――“第二の焼け跡”からの再出発 池上 彰

 『先送りできない日本――“第二の焼け跡”からの再出発』(池上 彰,角川oneテーマ21,2011年5月10日発行)を読了。

 このところの日本は,いろいろな面で行きづまっていました。行きづまりの原因は,これまでの政治が,さまざまな課題を先送りしてきたことにあります。もう日本は先送りは許されなくなったのです。(pp. 4 - 5)

なぜ人は先送りするのだろう。
課題を解決するスピードを上げていかねば,先送り体質から脱却できない。

「誰がライオンで誰がシマウマなのか,私にはわからないが,これだけはわかっている。中国がWTOに加盟して以来,その両者と世界各国は,どんどん速く走らなければならなくなっている。中国の WTO 加盟が,共同作業の別の形――オフショアリングを強烈に加速させたからだ。」(『フラット化する世界』トーマス・フリードマン)(p. 39)

オフショアリング=企業の海外移転
加速する世界に,日本はついていけているか。

 他国によって作られたルールを前提にして,国の方針を決めるのではなく,国際的なルール作りの土俵に上り,自らルールを作っていくこと。これこそ,これまで日本が苦手としてきたことです。でも,ここから始めなければならないのです。(p. 49)

ルールを作るためには,あるべき姿を描くことができなければならない。

 大事な産業は,なんとか保護したい。誰でも考えることです。ところが,その温情が仇になることがあるのです。国の保護を受けた産業は衰退する。そんな例をたくさん見てきました。(p. 58)

保護すれば衰退する。
「かわいい子には旅をさせよ」と同じ。

 政治は,なるべく市場での競争には干渉せず,自分の会社が倒産してしまった中小企業の社長さんが行きづまって首をくくらなくてもいいように社会福祉で手を差し伸べ,また再起するチャンスをつかんで社会へと送り返す。そんな社会が健全だと思うのです。(p. 88)

セーフティネットが大切だが,過度のセーフティネットは不要。
セーフティネットは,最低限でいい。

日本におけるガラパゴス化現象 by 野村総研(pp. 118 - 119)

  1. 高度なニーズに基づいた製品・サービスの市場が日本国内に存在する
  2. 一方,海外では,日本国内とは異なる品質や機能要求水準の低い市場が存在する
  3. 日本国内の市場が高い要求に基づいた独自の進化をとげている間に,海外では要求水準の低いレベルで事実上の標準的な仕様が決まり,拡大発展していく
  4. 気がついた時には,日本は世界の動き(世界標準)から大きく取り残されている

日本は標準化が苦手なのかもしれない。
ベースがあり,応用を積み重ねるという設計がそもそもできないのか。

 韓国の手法は極めてシンプルです。日本製品というお手本を徹底的に模倣し,ターゲット層のニーズをこれまた徹底的に調べ上げて,“あなた好み”のスパイスをまぶして魅力的に演出するのです。(p. 122)

かつて,日本もアメリカ製品を模倣することから始めたのではないか。
マネされない製品を生み出せばよい,と考えてみても,なかなかそんな都合のよいものは思い浮かばない。

世界各地のゲリラ戦で欠かせない武器としてゲリラたちに知られているのが「AK-47」(「カラシニコフ」という自動小銃)です。世紀の傑作といわれるカラシニコフの特徴は,「隙間だらけ」。敢えて部品と部品の間に隙間を作り,砂漠の砂が入り込んでも,弾が詰まって作動しなくなることがないように設計されています。(p. 130)

設計の改良を重ねることで,AK-47が完成したそうだ。
生死にかかわる製品だからこそ,設計の良し悪しは,本当に大事なのだろう。

 ちなみに,1997 年に首相に就任した労働党トニー・ブレアは,首相就任時 43 歳でした。老大国イギリスは,危機に直面すると,若いリーダーを選んで危機を乗り越えようとするのです。(p. 159)

日本で 40 歳台のリーダー(首相)が誕生することは,なかなか考えにくい。
フレッシュな力を政界へ送り込むことができていない。
そのため,高齢者を意識した政策が横行し,若者の支える政策が足りなく見える。

 官僚たちに,ある程度の自由度を与えて,さまざまな方針や対策を考えさせる。つまり知恵を出させるのです。その上で,政治家が決断する。これが本来の政治主導のはずです。官僚を使いこなすのが,本来の政治主導なのです。(p. 161)

知恵を出す,と簡単に言うけれど,そんなに簡単なものではない。
少なくとも,政治家がビジョンを示さなければ,方針や対策を考えることができないはず。

 単なる政局報道なら,簡単に面白おかしく報道することが可能です。でも,対立する政策の違いをわかりやすく解説することは面倒です。記者がしっかり勉強しておかないと,記事が書けません。かくして,安易な政局報道ばかりが流れて,国民は政治家の言動に失望します。今後の日本がどちらの道に進むべきかという政策に関する論争をきちんとわかりやすく伝えること。それが,政治家の脂質を見分けることのできる国民を育てることになるのです。(p. 167)

報道のあり方を本気で考えるべきではないか。
昨今の報道を見ると,記者の力量や報道機関の力そのものが衰えているようにしか見えない。

「カントやロックの思想をノートにとり,記憶するのが学問ではない」とサンデル教授は言います。「大切なのは正解を出すことではない。考えることです」と。(p. 179)

考えて,考えて,考え抜くしかない。
それは,迷い,迷い,迷い続けることにほかならない。