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現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

事故がなくならない理由 安全対策の落とし穴 芳賀繁

2020年4月7日更新

『事故がなくならない理由 安全対策の落とし穴』(芳賀 繁*1PHP 新書)を読了。

結論を先に言うと,安全対策がどのような成果を上げるのか,あるいは上げないかを決めるのは,その安全対策によって人間の行動がどのように変化するのかにかかっている。これは工学の問題ではなく心理学の問題なのである。(No. 18)

安全対策は,心理学の問題であるならば,どのようなアプローチで対策を行えばよいのか。

リスク補償行動とは,低下したリスクを埋め合わせるように行動が変化し,元のリスク水準に戻してしまうことをいう。(No. 463)

リスク補償行動*2がある限り,リスク対策は「いたちごっこ」となってしまうのか。

ヒューマンエラーはシステムの中で働く人間が,システムの要求に応えられないときに起きるものなのだから,対策は設備を含めたシステム全体で考えるべきである。この意味で,ヒューマンエラーは失敗やうっかりミスと同義語ではない。ヒューマンエラーはシステムの中で起きる,人間の判断や行動の失敗なのである。(No. 981)

 ヒューマンエラーは,システム全体で考える。

このように,リスクに直面した人々が「そんな重大なことが起きているはずがない」と思いたがり,リスクを過小視する傾向のことを「正常性バイアス*3」(ノーマルシー・バイアス)という。「正常化の偏見」などと訳す人もいるが,「偏見」という言葉は誤解を招く。ここでのバイアスとは歪んでものが見えること,すなわち,偏って事態を認識することである。(No. 1044)

リスクに直面したとき,正常性バイアスに陥っていないか,自分に問う。

2020 年 4 月 7 日追記

2020 年 4 月 7 日,新型コロナウィルスまん延阻止のため私権制限を含む措置を可能にする緊急事態宣言が発令された。
緊急事態宣言が発令されてなお,正常性バイアスに陥っている人がいないことを願う。

事故がなくならない理由 安全対策の落とし穴 (PHP新書)

事故がなくならない理由 安全対策の落とし穴 (PHP新書)

 

 

*1:1953 年生まれ。1977 年に京都大学大学院修士課程(心理学専攻)を修了して,国鉄に就職し,鉄道労働科学研究所,JR鉄道総合技術研究所で鉄道の安全に関わる心理学,人間工学の研究に携わる。1995 年,東和大学工学部経営工学科,1998 年,立教大学文学部心理学科,2002 年同教授,2006 年,立教大学現代心理学部心理学科教授などを経て 2018 年 4 月から現職。ヒューマンファクターズ,交通安全,安全マネジメント等に関する研究・学会活動のほか,JR西日本「安全研究推進委員会」委員長,日本航空「安全アドバイザリーグループ」メンバー,京王電鉄安全アドバイザー,朝日航洋安全アドバイザー,北近畿タンゴ鉄道外部安全評価委員などを兼任。

*2:risk compensation behavior

*3:Normalcy Bias. 認知バイアスの一種。自分にとって都合の悪い情報を無視したり,「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」というように,過小評価したりしてしまう人の特性のこと。