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悩む力 姜尚中

2020年2月23日更新

『悩む力』(姜尚中集英社新書,2008年5月21日発行)

戦後,日本やドイツを含めた多くの国が悲惨な失敗の反省に立って,人間を消耗品として扱わないことに懸命になりました。「国のために国民がある」のではなく,「国民のために国がある」という方向に転換しようとしたのです。そのようにして何十年か努力が続けられたのですが,それも怪しくなりつつあります。(pp. 19 - 20)

「国民のために国がある」というのは正しいように見えるが,助けてもらって当然と思う国民が出てくるのではないか。

そもそも近代の資本主義というものが誕生したとき,そこには美しい理想のようなものがありました。十八世紀の経済学者のアダム・スミスは,『国富論』の中で,何ぴとにも妨げられない自由な競争によってこそ,富が生まれ,豊かな社会が実現すると言いました。そしてどんなに競いあっても,人びとの中に道徳やモラルが存在する限り,いわゆる「神の見えざる手」が働いて,不平等や不均衡は生じないと期待したのです。(p. 55)

アダム・スミスが期待したほど,人びとに道徳やモラルがなかった。
だから不平等や不均衡が生じている。

letzte Menschen(末人)は,「最後の人びと」と訳されることもあり,なかなか含みのある言葉です。これは,ものの意味を考えるのをやめた人間の末路であり,それをウェーバーは「精神なき専門人,心情なき享楽人」とたとえたのです。(p. 56)

なぜ,僕はここにいるのか,その意味を考えることをやめてしまえば,末人となってしまう。

ゲーテの『ファウスト』の中に,「悪魔は年寄だ。だから年寄にならないと悪魔の言葉はわかりませんよ」という言葉が出てくるのですが,なかなか意味深長です。若者の浅知恵は,老人の熟練した知恵にはかなわないということでしょうか。(p. 68)

なかなか年長者に議論で太刀打ちできないのは,そのせいかもしれない。

そこには,挫折や悲劇の種がまかれていることもあります。未熟ゆえに疑問を処理することができなくて,足元をすくわれることもあります。危険なところに落ちこんでしまうこともあります。でも,私はそれが青春というものだと思うのです。(pp. 87 - 88)

足元をすくわれる,危険なところに落ちこむ,それも青春。

人がいちばんつらいのは,「自分は見捨てられている」「誰からも顧みられていない」という思いではないでしょうか。誰からも顧みられなければ,社会の中に存在していないのと同じになってしまうのです。(p. 122)

誰かからも求められない存在になったら,つらい人生となってしまう。

悩む力 (集英社新書 444C)

悩む力 (集英社新書 444C)

  • 作者:姜 尚中
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/05/16
  • メディア: 新書