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憲法の力 伊藤真

2020年2月16日更新

憲法の力』(伊藤真集英社新書,2007年7月22日発行)を読了。

あくまでも憲法は国家権力に対する歯止めであって,国民に愛国心を押しつけたり,責務を課したりするようなものではない,という原則をしっかりとふまえていることが重要です。(p. 25)

憲法の目的は国家権力への歯止め。国民に何かを強制するものではない。

国政レベルで間接民主制を原則としているのは,全国民の代表者である国会議員が十分な審議討論をしたほうが,より妥当な結論を導けるであろうと考えたためです。(p. 46)

国会議員はその前提条件をしっかり認識した上で,審議討論してほしい。

法律は国民がそれを守る義務を負うものですが,憲法は国家権力が守る義務を負うものです。法律が国民の自由を制限するものであるのに対して,憲法は国家権力側を制限して国民の人権を守るものです。法律は国民を拘束しますが,憲法はその法律を作る人,国家権力を拘束します。(p. 66)

憲法は国家権力側を制限して,国民の人権を守る。

では,同質性を追求するとどうなるでしょうか。同質性の中にいる人間は,心地よくて安心です。確かに私も気心の知れた仲間と一緒にいると気がやすまります。ですが同時に,外との間に壁ができてしまいます。それは,差別や排除の論理につながっていくことになります。(p. 87)

日本は島国であるため,同質性を追求してきた。そのため,外との間に壁ができて,国際社会から取り残されるケースが多くなる。

このように,同じ人類という点に共通性を見いだし,だからこそ,お互いの違いを受け入れあえるはずだ,というのが日本国憲法の考え方なのです。(p. 95)

人類が目指すもの,平和を維持すること。専制,隷従,圧迫,偏狭の廃絶すること。

私は,九条が掲げる徹底した積極的非暴力平和主義を高く評価しています。すべての戦争とその誘因となる武力を一切放棄し,交戦権を認めず,戦力ももたないというところまで徹底した積極的非暴力主義が書かれた憲法は,世界史上に類をみません。(p. 107)

世界史上で類がないのは,正しいことなのだろうか。積極的非暴力主義では,暴力に対向できないのではないか。

戦争遂行という至上目的もしくは至高思想が前面に出てくると,むしろ日本人を殺すということが論理的に正しくなるのである。(中略)沖縄戦において県民が軍隊に虐殺されたというのも,よくいわれているようにあれが沖縄における特殊状況だったとどうにもおもえないのである。(『歴史と視点―私の雑記帖―』新潮文庫司馬遼太郎)(pp. 113 - 114)

戦争という目的のために,自国民を虐殺することも想定されうる。

この自衛軍の創設,靖国神社的なものの復活,総理大臣の権限強化,という三位一体の構造で,戦争へのハードルを限りなく低くしています。将来に向かっての積極的非暴力平和主義の展望をも奪ってしまう内容になっています。(p. 175)

積極的非暴力平和主義を掲げることで,平和が実現できるのであればそれに越したことはない。しかし,国家の平和が脅かされるようなことを想定して,その場合の対策を行っておくことは,国家を護るためにとても重要である。

憲法の力 (集英社新書)

憲法の力 (集英社新書)

  • 作者:伊藤 真
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/07/17
  • メディア: 新書