Masassiah Blog

現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

バカの壁 養老孟司

2019年12月18日更新

ところが,私たち日本人の住むのは本来,八百万の神の世界です。ここには,本質的な真実は何か,事実は何か,と追及する癖が無い。それは当然のことで,「絶対的真実」が存在していないのですから。これは,一神教の世界と自然宗教の世界,すなわち世界の大多数である欧米やイスラム社会と日本との大きな違いです。(pp. 20 - 21)

真実と事実を究明することなく,曖昧なまま終わることができるのも日本の良いところ。

付け加えれば,科学はイデオロギーでもありません。イデオロギーは常にその内部では 100 % ですが,科学がそうである必要はないのです。(p. 29)(P29)

科学で全てを解き明かすことはできていないし,今は絶対的なものではないのでイデオロギーにはならない。

「自分は本当は他人と違うのですが,あなたがマニュアル=一般的なルールをくれれば,いかなるものであろうとも,それを私はこなしてみせましょう」という態度なのですから。こういう人は,ご自分のことを随分全人的な人間,すなわちあらゆる面でバランスがとれていて,何にでも対応できる人間だと思っているのではないでしょうか。(p. 46)

マニュアルがなければ,何もできない,やろうとしない人は,いずれ人工知能に置き換わっていくだろう。

「あんたと隣の人と間違えるやつ,だれもいないよ」と言ってあげればいい。顔が全然違うのだから,一卵性の双生児や,きんさん,ぎんさんじゃない限り,分かるに決まっている。「自分の個性は何だろう」なんて,何を無駄な心配してるんだよと,若い人に言ってやるべきです。(p. 69)

一人ひとり違う個性があるから,自分の個性とは何だろう,なんて思い悩む必要はない。

自己実現」などといいますが,自分が何かを実現する場は外部にしか存在しない。より噛み砕いていえば,人生の意味は自分だけで完結するものではなく,常に周囲の人,社会との関係から生まれる,ということです。(pp. 109 - 110)

自己実現するためには,周囲の人,社会との関係は不可欠である。
中に引きこもっていないで,外に飛び出さなければ,自己実現は達成できない。

社会的に頭がいいというのは,多くの場合,結局,バランスが取れていて,社会的適応が色々な局面で出来る,ということ。逆に,何か一つのことに秀でている天才が社会的には迷惑な人である,というのは珍しい話ではありません。(p. 128)

色々な分野のことを満遍なく秀でていることが,社会的に頭がいいということ。
一つの分野に特化しすぎずに,違う分野を学ぶ機会があれば,そのチャンスを逃さない。

サラリーマンというのは,給料の出所に忠実な人であって,仕事に忠実なのではない。職人というのは,仕事に忠実じゃないと食えない。自分の作る作品に対して責任を持たなくてはいけない。(p. 160)

会社に忠実で,仕事に忠実ではない面があるのは否めない。
本当にいい仕事をしたいならば,会社だけに忠実ではいけない。

学生が頭蓋骨を見て何もわからないように,現物から学ばないというのは,全部バーチャルになっているということの表れです。(p. 167)

専門書で学ぶ,シミュレーションで試す,それだけではダメ。
できることならば,実物に触れて,色々な実験をしてみることが大事。

では,その遊んだ分は一体どうするのかということを本当に考えてきたか。合理化,合理化という方向で進んできて,今もその動きは継続している。が,それだけ仕事を合理化すれば,当然,人間が余ってくるようになる。(p. 177)

合理化という方向で進んでいるので,人はやや減りつつあるが,一人ひとりの仕事は合理化されているとは思えない。

つまり,プラトンが言うところの「哲人政治」というものは成り立たない。なぜなら,プラトンは学者だから,人間,どこまで利口かということを考えて,利口な人に任せたらいい,と考える。

しかし,現実はそうではない。多数を占めているのは普通の人だから,普通の人がどの程度で丁度いいかをしっかり見据えておかないと,間違ったほうへ行ってしまう。(pp. 182 - 183)

利口な人だけで考えた政策は,多数を占める普通の人には受け入れられないこともある。普通の人の目線で考える必要があるが,考えてもわからないので,普通の人に聞いてみる。

バカの壁というのは,ある種,一元論に起因するという面があるわけです。バカにとっては,壁の内側だけが世界で,向こう側が見えない。向こう側が存在しているということすらわかっていなかったりする。(p. 194)

壁の内側だけにいないで,向こう側の世界のことも知る。
向こう側の存在と対話することで,壁を崩していく。

徳川家康は「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し」と言いました。この言葉をその通りだと思う人が,今時どのぐらいいるのかはわかりません。私は遠き道を行くどころか,人生は崖登りだと思っています。(p. 199)

徳川家康の時代は重荷を負っていたとしても,平坦な道を行くことができたのかもしれない。
現代においては,重荷を負いながら,険しい崖を登らなければならない,という状況かもしれない。
平坦な道では,個人差は生まれないが,崖登りだと個人差は大きくなりそう。

安易に「わかる」,「話せばわかる」,「絶対の真実がある」などと思ってしまう姿勢,そこから一元論に落ちていくのは,すぐです。一元論にはまれば,強固な壁の中に住むことになります。それは一見,楽なことです。しかし向こう側のこと,自分と違う立場のことは見えなくなる。当然,話は通じなくなるのです。(p. 204)

「話してもわからないことがある」,「絶対の真実なんてない」と心得ておく。
話が通じない人に対しては,どう対処すればよいのだろう。

バカの壁 (新潮新書)

バカの壁 (新潮新書)

  • 作者:養老 孟司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/04/10
  • メディア: 新書