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現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

決断力 羽生善治

『決断力』(羽生 善治*1将棋棋士角川oneテーマ21,2005年7月10日 初版)を読了。

  • はじめに
  • 第一章 勝機は誰にもある
  • 第二章 直感の七割は正しい
  • 第三章 勝負に生かす「集中力」
  • 第四章 「選ぶ」情報,「捨てる」情報
  • 第五章 才能とは,継続できる情熱である

しかも,名人戦というのは防衛の歴史といっていい。大山・中原両先生合わせて 33 期も名人位にあった実績がそれを示している。挑戦してこれを大変なことなのである。(p. 7)

名人に挑戦するためには,A 級順位戦を勝ち抜かなければならない。
挑戦するまで,とてつもなく大変。
毎年,最強の挑戦者が名人戦に臨む中,大山さん,中原さんは,名人を防衛し続けたことが凄まじい。

アメリカのカーネギー・メロン大学でロボットの研究をしている金出武雄先生から,面白いことを聞いた。学生を指導するときには,「キス・アプローチでやれ!」というそうだ。キス(KISS)というのは ”Keep it simple, stupid" の頭文字である。軍隊用語から来た俗語で,軍曹が部下に「もっと簡単にやれ,バカモン」という感じだという。これはエンジニアリングの基本的な考え方で,コンピュータの能力が低い時代は,よいアイデアでもコンピュータの解ける範囲に,無理に押し込めなければならなかった。(p. 24)

シンプルに考えなければ,どんなことが起こっているのかわかりにくい。
複雑そうな現象は,因数分解して考える,というのは言い得て妙。

七冠をとったあと,米長先生から,釣った鯛をたとえに,
「じっと見ていてもすぐには何も変わりません。しかし,間違いなく腐ります。どうしてか?時の経過が状況を変えてしまうからです。だから今は最善だけど,それは今の時点であって,今はすでに過去なのです」(p. 43)

今の最善は,今の時点。
いつまでもそれにこだわらない。

というのも,これまで公式戦で千局以上の将棋を指してきて,一局の中で,直感によってパッと一目見て「これが一番いいだろう」と閃いた手のほぼ七割は,正しい選択をしている。(p. 58)

直感を的中率については事後検証は必要であるが,基本的に直感は信じることにする。

一局の将棋が初めから終わりの一手まで,一本の線のようになっているのが私には理想なのだ。その線が途中で切れてしまうこともよくあるが,本来はその線があるはずだ。将棋を指すときは,その一本の線を極力見つけられるように持っていくのである。(p. 66)

 一本の線で百手先が繋がっているかもしれない。
将棋が完全解明されたとき,それはどんな線となるなのだろう。

これ以上集中すると「もう元に戻れなくなってしまうのでは」と,ゾッとするような恐怖感に襲われることがある。(p. 89)

 深く,深く集中していく過程で,どこまでも集中していける感覚だろうか。
集中しすぎて「戻れなくなる」という恐怖感を,今まで私は抱いたことがない。

ビジネスや研究の世界でも,たとえば,新しい技術を開発するのに,技術の解説書を読むことはプロセスとして大切だ。しかし,文献に書いてあることはすでに常識である。問題はそのあとだ。その先を目ざすには,自分で手を動かすことが知識に血肉を通わせることになる。現場で,あちらの方向,こちらの方向と試行錯誤を重ねるうちに,生きた知識が積み重なり,ステップアップする土台ができるのではないだろうか。(p. 130)

 まずは技術書を読んで,技術を身につける。
そして,色々な試行錯誤を繰り返して,よりよいものを目指していく。

私が,将棋を上達するためにしてきた勉強法は,初心者のころも今も変わらない。基本プロセスは,次の四つだ。(p. 153)

  • イデアを思い浮かべる。
  • それがうまくいくか細かく調べる。
  • 実戦で実行する。
  • 検証,反省する。

PDCA(Plan Do Check Action)に似たプロセス。
将棋の場合,検証,反省(Check)は感想戦で行う。

将棋の未来についてつけ加えると,私は楽観しているほうだ。たとえコンピュータが必勝法を見つけ出したとしても,それを人間が理解することはできないだろう。だからそんなことよりも,面白い将棋を指したい。楽しい将棋がいい。まだまだ広がっている未開の地平を開拓していくような,そんな将棋を指し続けていきたいと思っている。(p. 165)

 将棋の必勝法,最善手に最善手で応戦するけれど,結局は先手または後手がかならず勝ちとなるということだろうか。
コンピュータの最善手を,人間が最善と理解できるか。

以前,私は,才能は一瞬のきらめきだと思っていた。しかし今は,10 年とか 20 年,30 年と同じ姿勢で,同じ情熱を傾けられることが才能だと思っている。直感でどういう手が浮かぶとか,ある手をぱっと切り捨てることができるとか,確かに個人の能力に差はある。しかし,そういうことより,継続できる情熱を持てる人のほうが,長い目で見ると伸びるのだ。(p. 170)

才能は一瞬のきらめきではなく,継続できる情熱。
才能の一瞬のきらめきは明るいかもしれないが,情熱がある限り,さらに輝くことができる。

決断力 (角川oneテーマ21)

決断力 (角川oneテーマ21)

 

更新履歴

  • 2019年12月11日 新規作成
  • 2022年2月4日 第80期 名人戦 A 級順位戦 8 回戦で永瀬王座に敗れ,B 級 1 組への降級が決まったことを受けて加除修正。

*1:1970 年,埼玉県生まれ。棋士