池井戸潤の『銀行総務特命』(講談社文庫)を読了しました。初出は2002年8月だそうです。
帝都銀行の総務部で,不祥事担当の特命を受けている指宿修平(いぶすきしゅうへい)を主人公とした銀行小説です。“腐敗する組織をリアルに描いた傑作ミステリー”と裏表紙に記載されており,それを下記の表題の短編で楽しむことができます。
- 漏洩
- 煉瓦のよう
- 官能銀行
- 灰の数だけ
- ストーカー
- 特命対特命
- 遅延稟議
- ペイオフの罠
腐敗する組織として銀行を舞台としていますが,銀行以外の組織にも当てはまり,思わず膝を打つような描写もあり,非常に興味深いです。例えば,作品中に出てきたフレーズを引用します。
結局のところ正解のないところに正解を作り,道理のないところに道理をこじつけていく,組織の論理の理不尽さ故か。
私も組織で働くようになって,幾星霜でありますが,このフレーズは非常によくわかります。何かを決めるときには,道理をこじつけ,正解のないところで正解を作る,そしてそれを決裁者に仰ぐ,よくある光景であります。