伊坂幸太郎著の「マリアビートル」(角川文庫)を読了しました。
東北新幹線の中で,殺し屋たちがだましだまされながら,鎬を削るというお話です。殺し屋たちを紹介すると,
- 木村
幼い息子の仇討ちを企てる酒びたりの元殺し屋 - 王子
優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生 - 蜜柑と檸檬
闇社会の大物から密命を受けた腕利きの二人組 - 天道虫
とにかく運が悪く,気弱な殺し屋
となります。 東北新幹線が盛岡駅に着くまでの2時間30分,スリリングな展開が続きます。また,本作は「グラスホッパー」の世界から数年後であり,前作と同じように殺し屋たちが様々な言葉を放ち,いろいろ考えさせられます。
王子のような厨二病的な考え方も嫌いじゃないけれど,蜜柑のような重厚な考え方に憧れます。王子と蜜柑の言葉の中で,印象に残ったものを紹介したいと思います。
自分には何か特別な才能があるとすれば,それは,本を読解する力に秀でていたことだろう。本を読み,内容を噛み砕くことで,語彙が増え,知識が増え,いっそう読解力が増した。本を読むことは,人の感情や抽象的な概念を言語化する力に繋がり,複雑な,客観的な思考を可能にした。(王子)
私も読書が好きですが,本を読むことは思考を高い次元にするために役立つというのは共感できます。
「まず自分一人を愛せよ,なぜなら世の中のすべてはその基礎を個人の利害においているからである」(出典:ドストエフスキー 罪と罰)とな。ようするに,一番大事なのは自分の幸せ,というわけだ。それが回りまわって,みんなの幸せにも繋がる。俺は,他人の幸せや他人の迷惑についてろくに考えたことがないからな,そりゃそうだろう,としか思えないんだが,おまえはどう思う?(蜜柑)
一番大事なのは自分の幸せ,というのは常々思っていましたが,その理由について言語化するのはなかなか面白いなと思います。