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現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

果たして隣人は「火の粉」であるのか

雫井脩介の「火の粉」(幻冬舎文庫)を読了しました。

火の粉 (幻冬舎文庫)

火の粉 (幻冬舎文庫)

 

二年前に無罪判決を行った元裁判官・梶間勲の家の隣に,判決を下された男・武内真伍が引っ越してきた。武内は溢れんばかりの善意で梶間家の人々の心を掴むが,その周辺で次々と不可解な事件が起こっていく。

文庫本で565ページありますが,予想を裏切る展開が続き,眠るのを忘れて一気に読み切ってしまいました。

武内真伍はかなり特殊な人物であり,その特殊さが恐怖を引き立ててくれます。また,話の中で梶間家の介護,育児といった身近なテーマもあり,読みやすかったという一面もあります。

さて,やはり本題は何といっても裁判官の無罪判決に尽きるでしょう。

犯罪者を厳しく罰せよと言うのは簡単だ。 しかし,人を裁くのは,言うほど簡単なことではない。裁判官は量刑を一年プラス マイナスするのにも煩悶を繰り返しているのが実情なのだ。

梶間勲が武内真伍を無罪としたのは,常識的には考えられないような動機,武内自身が負った傷が自らによるものなのか,あるいは真犯人によるものなのか確定できなかった。それゆえ,武内の自白は警察の強要による側面が否めないということで冤罪の可能性が高いと判断したからだ。また,その犯行内容を鑑みれば,有罪とする場合は極刑やむなしであり,極刑か無罪かの選択をしたことになる。

しかし,次第に明らかになっていく真相ではその判断は間違っていたことになる。裁判官の判断は以下に重いものであるのか認識させられました。

死刑,冤罪という重いテーマも内包しており,非常に重厚な小説でありました。